この先、海です。
プロジェクト
わたしたちの周りの道路にある雨水溝は海につながっています。
「この先、海です。プロジェクト」は、このことに気づき、雨水溝に汚れを流さないようにすることで、きれいな海を守ろうとする環境学習プログラムです。
※「この先、海です。プロジェクト」は、NPO 法人海の自然史研究所が考案した、オリジナルの学習プログラムです。
プロジェクトの概要
「この先、海です。プロジェクト」は、雨水溝と海をテーマとして、地域の子どもたちが地域の人たちと一緒に学習を進めます。子どもたちは、このプロジェクトの中で、雨水溝の役目や働きを理解し、自分たちの暮らし方や行動によって直接海を汚してしまっていることがある、という事実に気づきます。そして、自分たちの意識や行動ひとつで変えられることがあることを知り、海や川の汚れを『未然に防ぐ』ことを周囲に呼びかけ、地域ぐるみで環境美化に取り組みます。さらに不特定多数の人たちへ周知するために、身近な道路にある雨水溝に、ステッカーやペイントで表示サインをつけます。
プロジェクト設計の背景
雨水溝は、雨天時に道路に流れ出る雨水を集めて流すための溝で、私たちの身の回りにある舗装された道のほとんどに設置されています。ところが、実際に雨が降ると、雨水だけではなく道路にあるゴミも一緒に雨水溝に流れ込んでいきます。雨水溝を通る水は、水処理施設を通ることなく海や川に直接流す仕組みになっていることが多いために、洗車したときの洗剤や、路上にこぼれたオイルなど道路に残っている汚れ、さらに、道路へポイ捨てされたゴミや直接取水口に投げ込まれたタバコの吸殻なども、すべて雨水と一緒に雨水溝を流れていくのです。
この事実をできるだけ多くの人に知ってもらい、地域の人たちが自分たちの地域の水環境、川や湖や海の美化を地域の人たちがすすめることができるようなプロジェクトを設計しました。
プロジェクトを通じて期待すること
プロジェクトでは、子どもたち自身が、地元の水環境について「知り」、自分たちの暮らしが水に与える影響に「気づき」、社会の仕組みを「理解し」、自分たちがまず「行動を起こし」、さらに知ったことを周囲に「知らせ」、地域の人たちと協力しながら活動します。
これにより、環境問題の解決方法を考える力をつけたり、環境美化活動をしたりするきっかけとなることを期待しています。また、社会性、協調性、主体性、情報収集・整理のスキル、コミュニケーション力、プレゼンテーション力などを身につけ、自分たちの地域の将来を、自覚と責任感を持って考え、地域の大人たちをも巻き込んで行動できる人材となってほしいと考えています。
さらに、このプロジェクトが、この活動に協力する地域の人たちにとって、改めて自身の暮らし方や地域の環境を考えてみる機会となり、環境問題に地域として取り組むきっかけになればと考えています。
実施のしかた
学校などでは4~5回の連続授業で実施します。
体験型のアクティビティ、絵本の読み聞かせ、ステークホルダーからのお話、現場を見に行く、学んだことを周囲に知らせる、というように、周囲に働きかけて環境問題を解決する行動を起こすところまでをおこないます。
環境イベントなどでは、3時間程度のショートバージョンを実施しています。
プロジェクトの実施のための準備について
ステッカー
授業の終わりに子どもたちにステッカーを配布しています。
生物のイラスト違いのものが数種類あります。
学校、団体、イベント名などを入れたものを配布したい場合は見積もりを依頼ください。
路面ステッカー
道路上に貼付施工する路面ステッカーです。専用ボンドで貼付します。ペンキでサインをペイントするよりも細かい文字などが入りますので、学校、団体、イベント名などをサインに入れたい場合は、ペンキに加えてこちらも道路に貼付することができます。作成には別途費用がかかりますのでご希望の場合は見積もりを依頼ください。
道路の許可
道路にペイントする、ステッカーを貼付するには許可がいります。また、その作業のための道路使用許可も必要です。道路の所有者管理者が誰なのかなどによって手続きが変わりますので、実施を計画する際には下調べと手続きが必要になります。
「この先、海です。プロジェクト」活動の流れ(連続授業で行う場合)
1.プロジェクトの導入 ~雨水溝ってなんだ?~
身の回りにある雨水溝に注目し、雨水溝にゴミが流れないように心がけることで海を汚さないようにできるということに気づくための導入。
体験型科学教育アクティビティMAREを用いた授業
体験型科学教育アクティビティで、児童たちが自分たちで体験しながら学びます。
ここで実施する「リンゴと海」は、科学者が、大きすぎるものなどを研究するときに使う手法「模型を利用する」方法を用いたアクティビティです。
リンゴを地球のモデルとして使って、それを切りながら、地球上の海と陸の割合や、どのくらいの広さの陸地を人間が利用しているのか、魚などが獲れる場所はどのくらいの広さがあるのかなどを、切ったリンゴの大きさから体験的に学ぶことができます。
広いように見える海であるが、実は、そのうちのほんのわずかな部分からしか漁獲はないこと、しかもその場所は沿岸部であることから、私たちは、特に沿岸部を守っていかなくてはいけないのに、同時にそこは一番私たちによって影響されやすいところであることに気付きます。沿岸部を守るために私たちは何ができるだろうか、と考えるきっかけとします。
絵本「ここは海の入り口」の読み聞かせ
絵本のストーリーにそって、雨水溝が海につながっていることを知り、そこに汚れた水やゴミが流れ込むとどんな影響があるかに気づきます。
絵本は、主人公たちが学校のみんなに働きかけ、みんなで周囲の清掃を始めるというストーリーになっており、自分たちにもできることがあることを気づくきっかけ作りとします。
2.周囲にある雨水溝を知る~専門家のお話、現地を見に行く~
学んだことを、身近なもので確認する。現実に身の回りでも起こっていることだということを実感し、そのあとの「行動をおこす」ところにつなげるための時間。
自分たちの周りにある雨水溝についてのお話を聞く
役場などから雨水溝の管理部署の方に来ていただき、雨水溝の役割についてお話をしていただいたり、市内各地の写真を見ながら身近な雨水溝がどこへつながっているのかを聞いたりします。
雨水溝が海につながっているか確かめる
周辺の雨水溝の海や川への出口を見に行きます。道路に落ちているゴミを確認したり、雨水溝を通ってきたに違いないゴミを確認したりします。
3.周りの人に知らせよう
自分たちだけでは実現できないこと、みんなの力を合わせたほうが効果的なことをする場合に、自ら行動して周囲も巻き込んでいくことを経験する。自分一人では小さな力でも、みんなで頑張れば効果が出ることを学ぶ。
ポスター作成
今まで学んできたこと、わかったこと、周囲の人たちに呼びかけたいことを表したポスターや壁新聞などを作成します。
どんなものを作成したら周囲の人たちに分かってもらえるのかを考え、作成し、掲示する場所なども自分たちで考えます。
ポスター発表やポスター展
外部の人たちに向けて、作成したポスターを見てもらいます。
役場など一般に開かれた施設などでポスターのロビー展を行い、児童の書いたポスターを掲示し、いろいろな人に見てもらう機会とします。他に周りの人に知らせるためのアイディアがあればそれも取り入れます。
4.「この先、海です」ペイント
公共のものである道路を使うさまざまな人に向けてアピールする方法のひとつとして、道路にサインをつけて、もっと多くの人に知らせる。
通学路などにペイントするとその後も身の回りの雨水溝を注意する意識が継続する。
「この先、海です」ペイント
道路を使う人がよく見てくれそうな場所にある雨水溝の蓋やゴミを捨てられやすいグレーチングの脇に、「この先、海です。ゴミを捨てないで」というサインをペンキでペイントします。
ペイントのほかに、耐久性のある路面ステッカーを貼付する場合もあります。
5.授業の最後に
参加した子どもたちにシールやクリアファイルを渡して、授業を覚えておいてもらうため、また、それを見せて他の人に伝えるためのツールとしてもらいます。