海洋リテラシーキャンペーン
海は、物理(海洋物理)や生物学など自然科学の多様な要素を持ち、理科・科学的テーマ性に富んでいる場所です。また、海とふれあうことは自然を直接体験する機会であり、自然体験学習としての意味を持ち、これは自然環境を大事にする行動形成のための環境教育につながります。
わが国では、2003年に「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が公布され、その第3条2項に「森林、田園……、海岸、海洋等における自然体験活動その他体験活動を通じて環境の保全の理解と関心を深めることの重要性」が示されている。また、2007年4月には、経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上をはかるとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的に「海洋基本法」が施行され、その第28条(海洋に関する国民の理解の増進等)では、学校教育及び社会教育における海洋に関する教育の推進がうたわれています。法律的にも、海をテーマとした教育が求められているのです。
2005年に米国において、K-12(幼稚園児から高校3年生)までの子どもたちへの海をテーマとした科学教育基準としてOcean Literacyが公表されました。Ocean Literacyとは、”An understanding of the ocean's influence on you-and your influence on the ocean.”とされ、子どもたちに教育を通して理解を促す海の重要な原理と基礎的概念が示されています。その後、海洋科学や科学教育において進展した知見を反映させ、改訂されたガイドが2013年に公表されています。
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左図のガイドのP6以降に、「海洋リテラシー〜重要原理と基本概念〜」のページがあります。
テキスト部分の日本語訳は、右図をクリックしてご覧ください。
(海研は、著作権者のNOAAの許可を得て翻訳しています。) |
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わが国では、Ocean Literacyは「海洋リテラシー」と訳されており、例えば、角皆(2007)によると、「海が私達に与える影響を理解し、私達が海に与える影響を理解すること」と定義されています。
海の自然史研究所では、海をテーマとした教育が目指すところは人々の海洋リテラシーを向上させることと捉えて、その具体的かつ効果的な施策としてMAREプログラムの普及展開をはかるとともに、それをツールとして海洋リテラシー向上の社会環境づくりのためのステークホルダーのネットワーク化や、日本をとりまく海洋環境にあわせた新規プログラム開発などに取り組んでいます。
■海洋リテラシー向上推進の基本体系
ここに表すものは、海洋政策研究財団による研究報告「21世紀の海洋教育に関するグランドデザイン」およびNPO法人海ロマン21による研究報告
「我が国における海洋リテラシーの普及を図るための調査研究」を拝読した上で、NPO法人海の自然史研究所として形成を目指す海洋リテラシー向上を推進するためのステークホルダーの関係すなわち推進体系であり、その中での当NPO法人の担う役割である。
■基本体系下での海研の活動
1. |
基本体系の構築 … |
各ステークホルダーにアクセスをはかり、体系が形成されるように理解を求めていく。 →海洋リテラシーフォーラム運営 |
2. |
地域NPOの開発および支援 … |
地域NPOが、その地域で海洋リテラシー向上を図る活動を充実して展開できるよう、プログラム開発と提供・人材育成・活動機会づくりなどの支援をおこなう。 |
3. |
海洋リテラシー向上実践活動 … |
地域NPO活動のモデルとしてもらえるような授業実践・企画イベント実践などをおこなう。 |
■海研が形成していくネットワーク
海洋リテラシー学習プログラムPoseidonの企画開発
2010年より、全国各地域の海洋リテラシー学習プログラム企画開発に取り組みはじめました。MAREの学習メソッド構築のノウハウを土台として、ホームグラウンドである沖縄・サンゴ礁海域をテーマとしたプログラム(サンゴ礁学習プログラムCoral Reef Study)、そして寒流の海・暖流の海をテーマとしたプログラム開発をすすめてきました。
これらのプログラムの総称をPoseidon(Program of study encouragement, inquiry, diversity and ocean)として、さらに地域の海の特徴を捉えたプログラムを制作していきます。
まだまだ進化していくと思いますが、考えている体系は以下のとおりです。
海洋リテラシー学習プログラムパンフレット
- 2011年3月度版 (PDF:約2.03MB)
- 2012年3月度版 (PDF:約3.56MB)
- 2013年3月度版 (PDF:約3.2MB)
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NPO法人海の自然史研究所websiteの海洋リテラシーキャンペーンのページおよびパンフレットの制作は、2010年度・2011年度・2012年度、地球環境基金の助成をいただいてすすめています。 |